リノベな家・景

対談

Interview

インタビュー

丸山景右が思い描く「リノベな家・景」の第一弾として、
モデルハウス「アトリエ景・古江」が完成しました。
「アトリエ景・古江」に携わった二人の専門家(建築・造園)と丸山との対談から
それぞれの想いや価値観・経験談をお伝えします。

Member

-対談者-

  • 内藤 正義

    内藤建築設計事務所 代表
    リノベーションする前の建物の設計を担当。施主さまとのやりとりや日本の家づくりの願いを語る。

  • 荒谷 真一

    株式会社ダイアックス 代表取締役
    庭づくりに関するプロとしての視点や理念に加え、今後推進する「庭育」のビジョンを語る。

Vol.1内藤正義、丸山景右 Vol.1内藤正義、丸山景右

居心地のいい家に
愛着を持って住まいたい

2023年10月に竣工した「アトリエ景・古江」。この建物は画家のNさまが1950年に平屋の自宅として新築され、30年後の1980年に2階建に建て替えられ、2003年にAさんに相続されました。
そして、2022年に縁あって私、丸山景右が譲り受けてリノベーションをしました。1980年に建て替えの設計を担当した、内藤建築設計事務所の代表である内藤正義所長に当時の話をお伺いしました。

敷地と語り合って外観をデザインする

丸山 内藤所長が建築設計事務所を開業されたのは何年ごろですか?

内藤 私は1969年に建築設計事務所を開業しました。同時に、父の代から続く町内会の役員として長年地域のお世話をさせてもらいました。

丸山 そういえば庚午・古江地区には内藤所長が設計を手掛けた作品がたくさん残っていますね。地元で人気のあるスーパーなどの店舗、賃貸マンション、個人邸宅など…。

内藤 おかげさまで、地元の皆さんからたくさんのご縁をいただきました。Nさまから建て替えの相談を受けたのは1979年7月のことでした。ご主人はいつも黙々と絵を描いていて口数が少なく温厚な方で、奥様は教師で快活な性格の方でした。二人暮らしでしたが、建て替えに関しては特別なご要望はありませんでした。

丸山 すると、すべてお任せだったんですか?

内藤 そうですね。奥様が方眼紙に間取りを書いておられましたが、どうしても玄関の位置が決められないと悩んでおられました。

内藤氏と丸山の対談の様子

丸山 住宅を建て替える場合、玄関の位置と向きはどうあるべきか?気にされる方は多いですよね。家の間取りが大きく変わりますからね。

内藤 実は当時、Nさまのお住まいの玄関の位置は西側でした。私は何度も足を運び、Nさまに生活スタイルをお尋ねし駐車スペースと庭の配置を想定した上で、玄関の位置をご提案しました。当然家相もチェックしました。

丸山 その結果、玄関の位置を思い切って西から南に変更し、インナーガレージをご提案されたんですね。

BEFORE建替前 1980年当時 玄関の位置は敷地に接する川とメイン道路から直接入れる南西側。居住空間はメイン道路に向けて配置されていた。 AFTER建替後 2022年当時 家相では南東向きの玄関はベストとされている。既存住宅では来訪者に部屋の内部が見えるため、それを避け玄関の位置を変更し西側の庭を活かすプランを考えた。
BEFORE建替前 1980年当時 玄関の位置は敷地に接する川とメイン道路から直接入れる南西側。居住空間はメイン道路に向けて配置されていた。 AFTER建替後 2022年当時 家相では南東向きの玄関はベストとされている。既存住宅では来訪者に部屋の内部が見えるため、それを避け玄関の位置を変更し西側の庭を活かすプランを考えた。

内藤 はい、そうです。当時Nさまは別の場所に駐車場を借りていたのですが、雨の日などは特に不便だとおっしゃっていました。最初は二人家族なので「平屋がいい」ということでしたが、2階を寝室だけの1部屋にし、階段の段数も少なくして中二階風の建物に設計しました。敷地が広ければ平屋の家を提案したかったのですが…。

丸山 なるほど…。私は初めてこの建物に足を踏み入れたときに身ぶるいをしました。部屋と庭との一体感に居心地のよさが実感できましたからね。そして廊下のない効率よい生活動線を見て、「この家にはそつがない」と感心しました。家は小さくても暮らしは豊かになりますね。外観デザインも素敵ですよね。

リノベな家・景の大屋根

内藤 私は設計する際に、道路から見える外観には特に気をつかいます。元々、住まいに落ち着きのあるダイナミックな大屋根の家が好きでしたから。

丸山 建物の外観は人でいえば顔ですからね。好みのデザインを選ぶことが大切ですね。それにしてもこの建物は立ちが低く、ふたつの大屋根が威風堂々としていて街並みに映えていますね。自分の家の屋根が周りからよく見えると安心感につながりますね。美しい外観は得した気分になりますからね。ところで内藤所長は住宅を設計する際にどういうことを心掛けていますか?

内藤 そうですね。私は設計を依頼されるとまず敷地状況を確認します。そして住む人の生活スタイルをしっかりヒアリングします。建築主の顔が見えない、つまり住む人が決まっていない住宅の設計はやらない主義です。住宅はそこに住む人に合わせて造るものであって、お仕着せで造るものではないと考えています。

昔ながらの街並み

その地域の時代背景を知り
その場所の持つ力を活かす

丸山 人にはそれぞれ個性があるように敷地にも個性がありますね。ですからその地域の風土や歴史、原風景、時代背景などの「時間軸」を知ることも大切だと思います。今回、リノベーションを計画するときに、事前に地域特性や周辺環境を調べて、その場所の持つ力を活かすことを考えました。

内藤 そうですか。何か新しい発見がありましたか?

丸山 月並みですが、この地域は山と海に囲まれ、気候は北方に山を背負っているので山すそは日あたりがよく温かく、南西の風が吹くようですね。

内藤 そうですね。庚午・古江地区は北西部に鈴ヶ峰、古田山などの一連の山並みが続き、南は広島湾に臨み、瀬戸内海には似島、厳島が散在しています。

丸山 それに古江駅から山手の方に向かって進むと貝塚やお寺があったんですね。

内藤 そうなんですよ。昔、この地区の人々は広島名産のカキを常食にしていたようですね。だから貝塚の跡があるんですね。現在は敷地の西側、つまり古江駅への通りには市の街路樹が立ち並び、それに遊歩道と水路まで整備されています。現在の遊歩道は昔は深さ1.5mの川で、鮒やハモが生息していたんですよ。大雨で増水すると上流から鯉が流されてきてました。子どもたちは大はしゃぎしていましたよ。

丸山 そうなんですね。今も古い街道筋が残っていて、緑と水を織り込んで落ちつける美しい街並みを形成していますね。歴史のある街ですね。内藤所長が住宅を設計される場合、最も大切にされていることを教えていただけますか?

内藤 私が常に考えている家づくりで最も大切なことは、敷地に寄り添って住む家族の暮らし方を一緒に考えることだと思います。どんな生活をされているか、さり気なく観察させていただきます。

丸山 私も同感です。お客さまの暮らしの中での困りごとや叶えたい願いごとをしっかりお聞きすることが大切ですね。そして家族の価値観を知った上でカウンセリングします。住宅の設計といえば間取りや広さを優先して考えがちですが、本当は、「家でどんな暮らしを楽しみたいのか?家族の大事にしていることは何か?」を聞き取ることだと思います。

内藤 その通りですね。実は、Nさまの建て替えを手掛ける前に私が設計した建物は、本格的な数寄屋の家でした。熟練の棟梁にアドバイスをもらいながら設計監理をしましたが、日本建築の考え方やデザインの美しさを改めて痛感しました。ですからNさまの建て替えでは、そんな経験に加え、戦後に脚光を浴びていたモダニズムを意識して設計しました。43年も前のことですから、当時は洒落たモダンな家として注目されましたよ。

丸山 そうでしょうね。モダニズムといえば、建築家の吉村順三さんが残した「良い住宅とはたまりのある家だ」という言葉を思い出しますね。「居心地の良い空間」を模索し、和の精神を貫いた作風は現代の住宅建築の礎となっていますからね。

内藤 そうですね。彼は狭い空間を広く感じさせるとか、数値化されない居心地の良さを追求していましたね。家の「たまり」と「抜け」という言葉は住宅設計の肝ですから。

丸山 「たまり」とは壁で囲まれ行き止まりの空間、つまり落ちつける居場所のことですね。そして「抜け」とは通り抜けることができる空間のことで広がりを感じる現象のことですね。このことを意識して設計を考えると間取りの方向性が決まりますね。

内藤 はい、そうですね。「たまり」と「抜け」をバランスよく考えると快適な空間を作り出すことができますね。生活動線を考える上でも重要ですね。少し話は変わりますが、最近プレハブ住宅のシェアが高くなり、大工さんがつくる本物の木の家が少なくなりました。「雨楽な家」と同じように今回の「リノベな家・景」も職人さんの手仕事を全面的に取り入れておられますね。とてもいいことだと思います。

職人の手仕事

丸山 ありがとうございます。人が暮らす家だけは本物の無垢の材料を使って職人さんの手仕事で建てるべきだと確信していますからね。うれしいことに2020年12月に建造物を修理する技術がユネスコ無形文化遺産に登録されました。国際条約に基づく枠組みのひとつですから職人さんたちも励みになりますね。

内藤 そうでしたね。当時の菅総理大臣も「日本の職人さんの技術を次世代へ継承し国内外に発信したい」とメッセージを寄せていましたね。

丸山 それに萩生田光一氏(当時文部科学大臣)の「伝統建築工匠の技は自然素材を活かしながら豊かな建築遺産を産み出してきました」というお褒めの談話には私も意を強くしました。

内藤 そうですよ。丸山さんがいつも言っている「日本の住まいは新築もリノベーションも無垢の木と自然素材を使って職人さんの匠の技で造るべきだ」ということが実証されたわけですからね。工務店も自信を持ってもらいたいですね。

丸山 そうですね。実は私はこの古江の建物を譲り受ける前に拝見してひと目惚れし、感情が揺り動かされました。そして建物の本当の良さは理屈ではないことが実感できました。家づくりではしっかりした設計思想がなければ住む人に感動していただけないですからね。新築する喜びもひとしおですが、リノベーションはそれ以上にお客さまの感動や喜びが大きいように感じます。長年住み継がれた愛着のある建物が終の住処として大変身するわけですからね。

内藤 Nさまの場合は建て替えですが、大変喜んでいただけました。私は完成後にご主人から手描きの表彰状を贈呈してもらいました。生前は「アトリエで庭の風情を楽しむことが至福のひとときだ」と言われていました。

丸山 建築という仕事は人の心を動かし感動させるという不思議な力がありますね。琴線にふれる提案ができれば設計冥利に尽きるし、家づくりは華美な装飾をやめてデザイン美や素材の質感を重視すべきだと思います。自分の住む家は「少し控え目で小さくてもいい。決して威張らない家がいい」と思います。

内藤 その通りですね。住まいとは、本来家族にとって身も心も癒される場であるべきだと思います。そう考えると建物と庭・外構は一体化すべきですね。愛着のある心地いい住まいには、計り知れない価値がありますからね。

丸山 私は今回のリノベーションに関しては、省エネ性能や耐震性に配慮しながら、「どこを見て暮らすか」をテーマにして、「無垢の木や自然素材」を使い、「職人さんの手仕事」で居心地の良い空間をつくることに徹しました。住むほどに深みが増していく佇まいでありたいと願うと共に、いつも大好きなモノに囲まれて日々の暮らしを楽しめる住まいにしたいと考えています。この家にはいつまでも愛着を持って末永く住まうことができれば本望です。本日は豊富な経験に基づいたお話をありがとうございました。

雨楽な家の実例

日本には四季があります。その移ろいを感じるために自然を取り入れて建物と庭をひとつの空間としてつなげると開放感と心地よさを実感することができます。
そして庭にやってくる鳥や虫の声に心が癒されることもあります。小さな家でも庭をきちんとつくれば暮らしが豊かになります。

Vol.2荒谷真一氏、丸山景右 Vol.2荒谷真一氏、丸山景右

「建物も庭も主役」という考え方

「アトリエ景・古江」の造園工事を担当された株式会社ダイアックス代表の荒谷真一社長に庭づくりの考え方をお伺いしました。広島市出身の荒谷社長は「都市緑化フェアはなのわ庭園コンテスト金賞」や「岩国景観賞」など受賞歴も多く、庭づくりに取り組む姿勢とその作品は人々に多くの感動を与えています。

ポートランドの街並み

丸山 荒谷社長は2019年にアメリカのポートランドを視察されたそうですが、ポートランドといえば「緑が豊かで環境にやさしい都市」として脚光を浴びていますね。

荒谷 はい、そうです。ポートランドは全米で「一番暮らしたい街」に選ばれているので訪れる価値はあるなと思っていましたから、自分にとってとても貴重な体験でした。

丸山 仕事柄、かなりの刺激を受けられたんじゃないですか?

荒谷 そうですね。実際に訪れてみて、まさに私の目指す街づくりが徹底されていることが実感できました。特に刺激を受けたのは市民参加型の街づくりです。行政の体制が充実していて市民の意識も高く、街づくりの活動が非常に活発です。住宅地を視察して感じたことは、自邸を美しくするだけでなく市民一人一人が街並みのことを真剣に考えていたことです。

丸山 それはすごいですね。そこに住む人たちが知恵を働かせて行動すれば地域の景観をつくることができますからね。日本では考えられないことですね。

荒谷 そうです。日本でもそういうシステムがあれば誰もがそこに住みたくなります。そして資産価値が上がり自分の住む街に誇りを持つことができるようになりますからね。

ダイアックス代表 荒谷氏

丸山 ところで、「アトリエ景・古江」の現地を初めてご覧いただいたとき、どのようなインスピレーションが湧かれましたか?

荒谷 この家は住む人が庭もちゃんと管理されていて、きっと愛着を持ってお住まいだったんだろうなと直感しました。そしてその方の想いをつなげていきたいという気持ちになりましたね。良いモノは100年経てばクラシックになりますからね。

丸山 「クラシック」ですか、いい言葉ですね。古代ギリシア・ローマ時代の芸術作品のような調和のとれた美しさの象徴ですよね。

ダイアックス 作庭作品w

荒谷 そうですね。庭づくりは完成したときにお客さまに評価されます。ですから私は建物が一番美しく見える樹形、高さ、配置をしっかり考えることをモットーにしています。

丸山 一般的な話ですが、最近の若い人は「予算が厳しいので、とりあえず家を建てて庭はあとまわし」と考える方も少なくありませんね。

荒谷 その通りです。植栽をきちんとされる方は稀ですね。入居してもカーテンで視線を遮っていますからね。残念です。

丸山 折角、家を建てたのに家の中に閉じこもって季節の移ろいを五感で感じられないのは、もったいないですね。ところで荒谷さんは庭づくりでどのようなことを心掛けていますか?

荒谷 実は、ほとんどの造園屋さんは5年後に木や植栽が育って100%の庭に仕上がることを想定しています。そしてお客さまにそのことをお伝えします。しかし私は庭が完成したときに100%の出来高を求めます。その理由は、出来上がった時に感動がないと、植物にあまり興味がない人は手入れを怠ってしまうからです。だからお客さまには「5年後には150%になりますよ」とお伝えして期待して頂きます。

丸山 なるほど。いい考え方ですね。私が建物と庭の一体化を意識し始めたのは2000年に「雨楽な家」を商品化した頃ですが、住まいに本当の居心地の良さを追求すると、絶対に建物と庭は切り離せないですよね。日本には美しい四季があり、それがもたらす心地よい空間には自然との繋がりが欠かせません。窓から見える清々しい木々やその木にやってくる鳥の声や虫の音、そして草花などによって季節の訪れをふと感じることができますからね。

荒谷 そうですね。庭づくりに関心がない人は庭の世話が大変だと思われています。しかし水やりや剪定、雑草の手入れ、虫の駆除も実は自然とのふれあいなんですよね。それに造園は建物を引き立てて、佇まいをよくしてくれますからね。

丸山 そうですね。私は昔から「庭がなければ暮らしが貧しくなる」と言っていましたから、終の住処はなおのこと、庭を重視したいですね。

荒谷 いい考え方ですね。私は庭を作るときは、周囲の環境や風景を入念にチェックし、日あたりや風の通り、その土地の水はけの良し悪しまで確認します。近隣のいい風景があれば、それを借景としてとらえ一体にして庭づくりを考えます。

丸山 庭が完成し実際に暮らし始めると、水やりをしたり落ち葉を拾ったり、伸びた枝をカットしたりすることが楽しみになりました。ところで今回の庭づくりの提案の肝を教えていただけますか?

荒谷 メイン通りから見える松ですね。松は手入れが難しく、コストもかかります。松をもっと使いやすい樹木にしたいと思っていたところですので、丁度良い機会をいただいたと思っています。

丸山 私も年季が入った松は気になりました。少し枝ぶりが不ぞろいですが…。

荒谷 そうですね。枝ぶりは個性ですからね。少し手を入れるだけで小粒でもいい味を出すことができました。

丸山 今回のリノベーションは、庭をリメイクすることで、本当に居心地の良い暮らしが満喫できています。「建物が主役で庭は脇役」という考え方から「庭も外構も主役」と思えるようになりました。

荒谷 そう思っていただけるとうれしいです。私はお客さまから「しっかり庭をつくると得した気分になりますね」というお言葉を頂けます。光栄なことです。ひとつお尋ねしたいことがあるのですが、いいですか?

丸山 いいですよ、どうぞ。

荒谷 丸山さんは積水ハウスのプロデューサーから起業して工務店を支援するために「雨楽な家」を開発されましたよね。そしてこれから本格的にリノベーション事業を展開されるわけですが、随分、庭に対する考え方も変わられたんじゃないですか?

丸山 実は私が草花に最初に興味を持ったのは中学生の頃です。野球部に所属していましたが、ある日グランドそばで見つけた草花を一輪挿しにして部室に飾ると、汗くさい部室の空気感を変えることができたんですよ。何となく部員が和やかな表情になった気がしましたし、心に余裕ができたのを覚えています。

荒谷 中学生の頃から感性が育まれていたんですね。

丸山 いいえ、たまたまのことです。庭には日本人の美意識が凝縮されていますね。木や花を見て美しいとか、愛おしいと感じる心が誰にも湧いてくるはずだと思います。日本人は北欧の人と同じで、家具や道具など身のまわりのものをできる限り長く使って大切にしたいという想いがありますよね。この感覚は庭にも相通じるところがあると思います。

荒谷 その通りです。経年美化という考え方ですね。最近、人目を気にせず自然を感じられる場所として庭が見直されています。建物をリノベーションして住み継ぐ際には、庭にあるよいものを見つけ、新しい表現につなげるといいですね。

丸山 そうですね。正直言って建物と庭と外構は切っても切り離せないものですからね。それらは居心地のよさや暮らすよろこびや楽しさを実感するために、なくてはならないものだと思います。

荒谷 同感です。ところで丸山さん、花の魅力って何だと思われますか?

丸山 花の魅力は「きれい」「人の心を和ませてくれる」ではないですか?花を眺めていると自然と心が癒されますからね。

荒谷 それに日常生活の中に美しい花があるとリラックスできますね。仕事でイライラしていても落ちつけますし、花には不思議な力がありますからね。

丸山 しかし花にはひとつとして同じ瞬間がないし、絵画などと違って形に残ることはないですよね。花の命は短くて刹那的な美しさやはかなさがあると思います。樹木であれば日々、成長する姿を見ることができますけどね。

荒谷 はい、その通りです。木も花も草も人間が誕生する何億年も前から大自然の大きな力に育まれ生かされて生きてきたんですからね。

丸山 それはすごいことですよね。実は新しい暮らしが始まると「今日は天気がいいから花屋さんに出かけて花を買って飾ってみようか?」とか「庭をぼんやり眺めてみようか?」ということが生活パターンのひとつになりました。近くの山にも散歩がてら出歩くのも楽しみのひとつです。

リノベな家・景の庭

荒谷 いいですね。ところで丸山さんが今回のリノベーションを計画された際のコンセプトを教えていただけますか?

丸山 私が「アトリエ景・古江」を計画した時のコンセプトのひとつが「どこを見て暮らすか」です。ですから庭を見て暮らすことは絶対条件でした。10坪あまりの小さな庭でも大切にしたかったですね。

リノベな家・景の庭の夜の様子

荒谷 庭のある生活は一味違うセカンドライフが満喫できると思いますね。庭の難点は雑草の手入れですが、メンテナンスをラクにするポイントは土の露出を極力抑えることです。庭木はポイントを絞って見映えよく植えると、少ない本数でも存在感が際立つようになります。庭を間接照明でライトアップすると夜も庭を楽しむことができて暮らしの幅が広がります。

アトリエ・景の階段下やホール

丸山 そうですね。「アトリエ景・古江」では玄関に入ると吹き抜け空間があり、ササラ桁階段の下やリビングのニッチ、アトリエの出窓、そしてベンチの片隅や本棚にも花を飾りたい。それに、洗面所、トイレ、寝室にも…。少し欲ばりですかね?

荒谷 それはそれでいいんじゃないですか? 花いっぱい、緑いっぱいにすると生活に潤いが生まれます。しかしバランスには注意を払った方がいいですよ。

丸山 やりすぎは禁物ですね。そういえば一昔前にサントリーウイスキーのテレビCMで「何も足さない、何も引かない」というフレーズが流行しましたね。この「事足りる」という言葉は日本人の美意識の「侘び寂び」にも通じますよね。

荒谷 私もそのフレーズは好きですね。「十分である」とか「用が足りる」ということを常に肝に銘じておきたいですね。

丸山 実は今回のモデルハウスを造ることによって、自分なりのひとつの行動パターンが生まれました。それは「花を買う。その花に似合う花びんを選ぶ。そして飾る場所を決める」これらのちょっとした日常の行動は心に余裕を生みますね。そして自分たちだけの居心地のいい空間をつくることができると思います。するとなんとなく小さな幸せが実感できるんですよね。

荒谷 その通りだと思います。

丸山 ところで荒谷社長のこれからのビジョンを教えていただけますか?

荒谷 今、我が国では子どもの感性を育む幼児教育が注目されていますよね。私は地道に次の世代に期待して「庭育」を推進していくつもりです。「自然は変えられないけど自然を見る目は変えられる」ことを子どもたちに提言していくつもりです。

丸山 いいですね。「庭育」というのは子どもたちに庭を通して豊かな感性を育んでもらおうという考え方ですよね。幼少の頃から感性を磨くことは素晴しいことですね。

荒谷 そうです。自然を感じる庭には子どもたちにとっても大切なものがたくさんそろっています。庭で楽しく遊び、植物や土に五感で触れ合うと子どもたちの感性や好奇心が刺激され、豊かな感受性が育まれると思います。

アトリエ景・古江の庭の様子

丸山 そうなると子どもたちには創造力が身につきますね。「庭育」はとてもいいビジョンですね。私も「建物も庭も主役」という考え方でリノベーション事業を推進したいと思います。荒谷社長のこれからのさらなるご活躍を期待しています。

見て、触って、匂って、感じて
「リノベな家・景」を体感してみませんか。
見学会ご予約
ご相談・お問い合せ
error: Content is protected !!