リノベな家・景

Philosophyフィロソフィー

なぜ、元プレハブ住宅(積水ハウス)の家づくりプロデューサーが
本物の木のリノベーションにこだわるのか

丸山景右の「景」にかける想い

2023年10月に僕がプロデュースする「リノベな家・景」の待望のモデルハウスが誕生しました。
場所は広島市西区庚午の広電・古江駅前です。築後43年の空き家を譲り受け、自宅兼アトリエとして活用するため「アトリエ景・古江」と名付けました。

では僕がどのような想いで「リノベな家・景」を開発したのか、その誕生秘話を公開したいと思います。

丸山 景右

株式会社 リック 代表取締役

大学卒業後、新卒で積水ハウス入社。卓越した提案力と紹介営業を武器に13年間で住宅の販売実績が428棟という驚異的な記録を樹立。営業所長(広島)、事業部次長(大阪)を経て40歳でコンサルティング会社、株式会社リック1級建築士事務所を設立。数多くのプロデュース実績を残す。著書は単行本37冊、実務書12冊で累計100万部を突破。中国でも翻訳本を上梓。

#01

不純な動機で入社

僕は一意専心という言葉が好きです。「わき目もふらず一つのことに心を集中する」という意味です。

高校時代は野球部のエースとして愛媛県大会で準々決勝まで進み地元を沸かせました。大学は神宮の早慶戦に憧れて早稲田大学を受験しましたが失敗。地元の松山商科大学(現・松山大学)に進学し、野球は断念しました。

大学を卒業後、積水ハウスに入社。動機は「ボーナス10か月」という不純なものでした。新人時代の僕は住宅営業の仕事に無我夢中で取り組みました。

そして入社したときは建築の素人でしたが、スキマ時間を使って宅地建物取引士、二級建築士、プレハブ建築技術者の資格を独学で取得しました。

#02

「数寄屋の家」にチャレンジ

住宅営業が面白くなった頃に「数寄屋造り」の邸宅を希望されるK様とご縁ができました。きっぷのいい資産家でした。

上司に報告すると「積水ハウスではムリだ」とアッサリ拒否されました。しかし僕は諦めきれず、当時「数寄屋建築」で名を馳せていた棟梁に教えを乞うために静岡まで出向きました。その日は見るもの聞くものすべてが新鮮で、目からの鱗の連続でした。工場で部材を生産・出荷し、現場で組み立てるプレハブ住宅と異質な家づくりにショックを受けると共に、「数寄屋建築」に感動し木造住宅の奥の深さを知りました。

正直言って木造住宅に関して知識も経験もない僕がプレハブ住宅で「数寄屋の家」を造るということは門外漢のやることです。それでも設計スタッフの力添えを得て「数寄屋の家」を受注しました。1983年に70坪の「数寄屋の家」が完成し、施主のK様は大満足されました。それが証拠に建物を引渡した後も貸家や別荘などをご用命いただき、たくさんの建築予定のお客さまをご紹介していただきました。僕は有頂天でした。

#03

「これは貼りモノよ」にショック

積水ハウスで初めての「数寄屋の家」という話題性が大きな反響を呼び、建物見学会は多くの人でにぎわいました。

その会場である夫婦のささやきを偶然耳にしました。
「木の香りがしない、この柱は貼りモノよ」
そういいながら柱に鼻を近づけて匂いを確かめている奥様の様子を目のあたりにした僕は、その言葉に大きなショックを受けました。

そのとき「プレハブなんかで数寄屋をつくるなよ」と忠告してくれた静岡のあの棟梁の顔が浮かんできました。その日は僕の「営業の良心」が揺れ動いた一日でした。

#04

「住宅営業マンの地位を高めたい」
という一途な想いで独立

積水ハウスでトップ営業マンとして雑誌やメディアで紹介されるほどの実績を積んだ僕はその後、事業部次長(大阪)を務め、「住宅営業マンの地位を高めたい」という長年の夢を実現するために40歳で株式会社リックを設立。住宅コンサルタントとして挑んだのはバブルがはじける直前の1989年でした。

会社を設立するとすぐに全国の住宅会社から社員研修や営業システムの構築、それに商品開発などのオファーが殺到しました。クライアントは積水ハウス時代に私が積み重ねてきた現場の実践ノウハウに関心を寄せてくれたのです。そして、忙しいけれど住宅会社を支援する充実した毎日が続きました。しかし一方で、木造住宅を手がける工務店への指導はやればやるほどジレンマが大きくなったのも事実です。

僕が積水ハウスで経験してきた営業の成功メソッドを工務店にそのまま当てはめるのは無理があったことに気付きました。

#05

「丸山さんに木の心はわからないでしょう」
ある工務店社長の声に我に返る

「丸山さん、あなたはプレハブの積水ハウス出身だ。大手住宅メーカーのあなたに木の心はわからないでしょう」。そんな工務店社長や棟梁の声なき声に心を痛めました。

「いくら営業ノウハウを営業マンに伝授して感謝されようと工務店社長に認めてもらえなければ住宅業界のコンサルタントとしては失格だ」そんな想いが僕の心をかき立てました。

1995年の阪神・淡路大震災をきっかけに、木造軸組工法の勉強を始めました。全国の建築現場を足繁く見学し貪欲に工務店社長の声に耳を傾けました。質実剛健な寺社建築から数寄屋、茶室、尾州桧の豪邸そして地域密着型の工務店の棟梁が造るこだわりの木の家。どの建物にも日本伝統の匠の技が見え隠れします。そして、職人さんの手仕事に感動を覚えずにはいられませんでした。

そして、ある確信をつかみました。

#06

丸山の実家(松山市)

昔ながらの通り土間(丸山の実家)

「僕が本当に住みたい家は・・・」

新春の住宅建材メーカーが主催する、ある工務店セミナーの講演後、一人の工務店社長が僕に質問をぶつけてきました。「丸山さんは、住宅メーカーも工務店も指導しているし、木造もプレハブもツーバイフォーもおかまいなしだ。そんなやり方は節操がない…。丸山さんが自分で住みたい家はどんな家なのか正直に答えて欲しい」。少し感情的なその声に誰もが、かたずをのんで見守っていました。

「僕が住みたい家は、自分の生まれ育った家です」。これが第一声でした。「少し古びた家ですが冬暖かくて夏涼しい木の家が好きです。家に帰ると自分の体が癒され最高に落ちつけました。とても居心地がいいんです」。

僕は話を続けました。「実家には通り土間があります。玄関の引き戸を開けて、母が打ち水をすると、その土間から伝わってくるひんやりした風がとても気持ちいいんです。通り土間の奥には台所があって、かまどがありました。ウナギの寝床型の敷地なので、台所はいつも薄暗く、隣家とのわずかなすき間から差し込む光が、独特の落ちついた雰囲気を醸し出していました。

材料を吟味し腕利きの棟梁が建てた家なので、今なお一寸の狂いもありません。年の瀬になると棟梁がバイクでやってきて、「どこか具合の悪いところはないかね」と母に尋ねていた様子が思い出されます。面倒見の良い人でした。

築後50年が経過する僕の実家は、弟と背丈を印した柱のキズも、ボールを投げつけてへこんだ壁も、落書きしたふすまも、つぎはぎのある障子も幼い頃の思い出をしのばせてくれます。
人が住む家は経年美化され、住むほどに味わいを深めその価値が実感できなければなりません。本物の無垢の木で大工さんと左官さんの手仕事でつくる家。僕はこんな家が好きです。本当に住みたい家です。」と自分の思いの丈をぶつけました。

話を終えると、一斉に拍手が起こりました。静かに聞いてくれていた工務店社長の瞳が輝いています。その時、僕はある手ごたえを感じ取り、そして、さらなるやる気が湧いて来ました。

#07

「雨楽な家」で工務店支援を

日本の家づくりはこの半世紀の間に大きく変化しました。街並を見ても住宅展示場を見ても、そこには国籍不明の住宅が建ち並んでいます。工場で量産され、施工しやすい材料で効率よく、キレイに仕上げるのがプレハブ住宅です。

一方で工務店が造る木造軸組工法の家は相変わらず生産性が低く、デザインも古くさいイメージが払拭できていないことも事実です。

工務店は大手住宅メーカーの家づくりに追随しデザインを模倣し、その結果、無垢の木の構造美や職人の手仕事の魅力を放棄してしまいました。そんな工務店の実態を危惧した僕は、将来、淘汰が予想される工務店を支援するために、「工務店の経営戦略セミナー」を展開しました。目指すは、無垢の木や自然素材をふんだんに使って木架構の美しさをデザインした職人さんの匠の技で手づくりする本物の家づくりです。

そして2000年10月に広島に誕生したのが「雨楽な家」です。「雨楽な家」は「雨の日も楽しく暮らす」という自然との共生を旨としています。雨、太陽、木、土、風などの自然の恵みに感謝し、暮らしを楽しもうという思いが込められています。

土間で子どもが遊ぶ実例写真は「雨楽な家」の1棟目のモデルハウスです。

おかげさまで、「雨楽な家」をリリースして23年。工務店を会員組織化した「すぐやろ工務店会」では2000棟を超える「雨楽な家」を建てさせて頂くことができました。(2023年10月末現在)

#07

「リノベな家・景」が誕生

今や、日本の文化や伝統の良さが家づくりにも見直され、外国人にも誇れる本物の日本の家が、当たり前につくられるようになってきました。木造軸組工法は古くさいものではなく、常に進化するものです。そして2020年12月17日に職人さんの建造物を修理する伝統技術が国際条約に基づきユネスコ無形文化遺産に登録されました。このことは自然素材を活かしながら古来より受け継がれてきた「匠の技」が評価されたことになります。とても喜ばしいことです。

これからも家づくりの工業化はどんどん進むでしょう。しかし日本人が日々暮らす家は、本物の無垢の木と生きた自然素材を使って、職人さんの手仕事でつくるべきだと思います。このような「雨楽な家」のコンセプトをベースにして新しい今どきの暮らしの価値観やデザインを加味してリノベーション商品「リノベな家・景」は2023年10月に広島で誕生しました。

「リノベな家・景」のモデルハウス
「アトリエ景・古江」に携わった人々から聞く、
家づくりや造園に関する想い。
見て、触って、匂って、感じて
「リノベな家・景」を体感してみませんか。
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