現在我が国は物価上昇によるスタグフレーション状態で2023年の貿易収支は3年連続の赤字（9兆2913億円）に陥り国民は将来不安を余儀なくされています。住宅業界では既に世帯数を超える住宅ストックを擁し、さらに相続した家に住まない人が増えて、空き家問題は重要課題として提起されています。そして、近年追い打ちをかけるように建築費が高騰し「家が建てられない」住宅不況の時代に突入しました。そんな状況下、新築志向が薄れストック重視の戦略が新しいビジネスとして脚光を浴びてきました。空き家の総数はこの20年で576万戸から849万戸へ約1.5倍に増加し、今後も増え続け、1000万戸に到達することは確実です。住宅の着工戸数の最盛期は1973年で190万戸（持ち家76万戸）でしたが2023年は81万戸（持ち家22万戸）と激減し新築住宅市場は低迷しています。そこで「リノベな家･景」を商品開発し工務店のリノベーション事業への支援策を企画しました。

「リノベな家･景」の名前の由来
私たちのリノベーション事業の目指すひとつのテーマに風景を大切にしたいという想いがあります。人の目に見える様子である風景・景色・借景・景観・絶景などの景から「リノベな家･景」と命名しました。

建築資材が高騰し、諸物価の上昇が現実化しています。さらに今後予想される増税問題などの悪条件の中で新築住宅の取得のハードルは上がり、手が届かなくなる可能性は大です。しかし、国策である中古住宅の流通は活性化し、既存住宅のリノベーションや住まいの買替え需要が増えてきます。そこで弊社がリノベーションを推進するにあたりターゲット層を絞り込みました。

一つ目は「実家リノベ派」です。「古くなった実家をリノベーションして親と同居して住み継ぐ」というタイプは、実家を何らかの理由で残したいという強い思いと愛着があります。土地代は不要、親の資金援助や子育て支援も見込めます。相続した家をリノベーションする方法は増えると見込んでいます。

二つ目は「中古住宅リノベ派」です。「土地を購入して新築したい」という予算の限られた一次取得者の新築派は、その願いが高嶺の花となりつつあります。そういった背景から格安な中古住宅を取得し、リノベーションをして手の届く価格でマイホームを取得したいという新しい価値観が生まれています。資金負担を軽減し、購入費とリノベ費用を合算してローンを組み、自分の好みのテイストの家に住みたいというこのタイプは、今後若者世帯を中心に活況を呈するものと思われます。

三つ目は「終の住み家リノベ派」です。老後の生活環境を整え、人生の楽しみを趣味や住まいに求める余裕ある高齢者の方がターゲットです。2階建住宅を平屋に減築したり居住空間や水回り設備に限定して小規模なリノベーションに予算をかける人は潜在的なターゲットとなります。この層は木をふんだんに使った職人の匠の技には共感していただけると確信をしています。

住宅のリノベーション市場が活性化し期待感が高まるなかで、工務店がリノベーション事業に参画する上で大切なことは大手ハウスメーカーやただ単なる模様替えをするリフォーム会社とは一線を画することです。
工務店は得意技を駆使してリノベーション事業を展開しなければなりません。「無垢の木と自然素材」を使って、新築で培った匠の技を生かした造作デザインの「付加価値」を提供すれば、地域密着型の工務店として生き残ることは可能です。

今後、工務店は淘汰という荒波を覚悟しなければなりません。住宅の新築需要が大幅に減少し仕事の奪い合いが余儀なくされるからです。だから今まで通り注文住宅中心の事業展開だけで生業を立てるのは難しくなります。工務店が生き残る戦略のひとつである「住宅のリノベーション事業」にチャレンジし、不動産の流通を絡めた展開も視野に入れるべきです。

リノベ工務店会は、推進本部が住宅のリノベーション事業を展開する工務店を支援します。リノベーション市場では、今後幅広い顧客層が見込めますが、不動産の「ワンストップサービス」を実践する必要があります。「ワンストップサービス」とは不動産物件の仕入れからリノベーション工事、販売までを一ヶ所で行うサービスのことです。中古住宅や空き家などの流通を地元の不動産業者と提携し「リノベ工務店会で」物件を買取り、会員工務店がリノベーションした後、販売する「買取再販事業」も視野に入れて展開します。この不動産流通事業を活性化するためにリノベ工務会・広島では、リノベな家･景のモデルハウスを見込客の集客拠点とするだけでなく、空き家・中古住宅などの不動産情報の集約拠点としても活用します。